「なのか」系タイトルはなぜ増えたのか

 最近――といっても、ここ10年くらいのスパンの話なのだが、実用書のタイトルの付け方が変わってきているように思う。例えば、昔なら「実用文の書き方」とそっけないタイトルだったろう本が、「なぜあなたの書く文章は読んでもらえないのか?」などと、疑問文にする場合が増えているようである。ここでは、そうした疑問文のタイトルを、仮に「なのか」系タイトルと呼んでおく。

「なのか」系タイトルは、ブログやインターネット上のニュース記事にもよく使われるようである。試しに、Googleで「なのか」と検索し、おそらくはブログかニュース記事と思われるタイトルを転記してみよう(申し訳ない、内容は確認していない)。

電磁波は本当に危険なのか?
「美人少ない」日本一 なぜ群馬県なのか
米国の新型インフルエンザ対策は十分なのか
エロゲのOPもダンスを取り入れる時代なのか
クールジャパンはどこまで真剣なのか
どこが問題なのか
なぜスタートアップハブに行くべきなのか
いまさら聞けない、“Ajax”とは何なのか?
ベッキーの髪の陰は何故ピンクなのか
誤解の理解-何故リンクが自由なのか

(「どこが問題なのか」は直球すぎて、困ってしまいますね)

「のか」で検索してみよう。

ちんちんは本当に骨折するのか?
北海道を落とすとどう跳ねるのか?
アシでメシが食えんのか
Chromeはなぜ速いのか
「仕事の速い人」はなぜすぐ腹を立てるのか
うどんはなぜ「冷凍」が美味いのか
最高学府はバカだらけ この現実どうするのか
電気自動車は本当に環境に優しいのか
任天堂は輝きを失っているのか
なぜ「20%ポイント還元」がなくならないのか?

 実にどうも世の中というのはいろいろな問題を孕んでいるらしい、ということがわかる。

 お次は書籍。Amazonの和書で検索してみよう。まずは、「なのか」(副題は省いています)。

セックスはなぜ“快感”なのか!?
新入社員はなぜ「期待はずれ」なのか
なぜアーレントが重要なのか
なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?
なぜマネジメントなのか
うちの社長は、なぜ「ああ」なのか
心はなぜ<不自由>なのか
男は、なぜ缶コーヒーが好きなのか?
アコギなのかリッパなのか
どうして会社に行くのが嫌なのか

 お次は「のか」。

半分売れ残るケーキ屋がなぜ儲かるのか
ギスギスした職場はなぜ変わらないのか
資本主義はなぜ自壊したのか
「多様な意見」はなぜ正しいのか
コンピュータはなぜ動くのか
なぜ君は絶望と闘えたのか
日本の「安心」はなぜ、消えたのか
なぜ、働くのか
なぜ投資のプロはサルに負けるのか?
自衛隊はどこまで強いのか

 これだけ、なのか?、なのか?、のか?、のか?、のか?、と畳みかけられると、「う。いや、あの、ちょっとお待ちください……」と追いつめられたような心持ちになる。もっとも、根こそぎ退治する魔法の言葉というのもあって、それは「知らんがな」である。「なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?」。「知らんがな」。書店でうんざりしたときのための最終兵器としてご利用いただきたい。

「なのか」系タイトルは、質問を突きつけられると「むむ」とつい反応してしまう人間の習性を利用しているのだろう。出版不況で昔ほどおおらかに構えていられないという事情も関係しているのだろうか。

 書店やネットでふらふら本やブログ、ニュース記事を探している人に対するアピール度は高いと思うが、一方で、ちょっとあざとい感じもする。物欲しそうで下品になりかねないので、いささか取り扱い注意のタイトルだと思う。