紋切型の言い回し

 今朝の新聞に、ある雑誌の広告が出ていて、こんなコピーがついていた。

混迷する現代社会を切る!

 紋切型の言い回しである。現代社会のいろいろな問題に対し、あれこれもの申すのだということはわかるが、言葉の強さの割には見る人の心に響かない。「そうかあ、現代社会は混迷しておるからなあ。どう切るのかなあ」などと、都合よく興味を抱いてくれる人はあまりいないだろう。

 この手の言い回しはいろいろあって、例えば、現代社会なら「激動の」「先の見えない」「多様化する」等々がよく前につく。少なくともわたしが中学高校の頃から、ずーっと現代社会は混迷し、激動で、先が見えず、多様化している気がする。

 朝日新聞には昔、鬼デスクと呼ばれる人がいて、原稿をチェックする際、紋切型の言い回しに徹底して赤を入れたそうだ。「衝撃が走った」と書いた記者の背中に「衝撃」と書いた紙を貼り、社内を走り回らせたという伝説がある。くだんの記者、「道草を食った」と書かなくてよかったと思う。

 紋切型の言い回しというのはついつい使ってしまう。それは筆先、あるいはキーボードを打つ指先に忍び寄り、油断すると、つい書いてしまう。紋切型の言い回しは虎視眈々と出番をうかがっているのかもしれない(これも紋切型ですね)。