この季節、電車に乗っていると、明らかに新入社員とわかる若者を見かける。
なぜわかるかというと、顔つきや、どこかたどたどしい話ぶり、それからもちろん話の内容のせいもあるが、ひとつにはスーツ姿に違和感があるのだ。
スーツが卸したてというだけではない(別に新入社員でなくとも卸したてのスーツを着ることはある)。何かこう、スーツに合った身のこなしではないのだ。
これは、改めて考えてみると興味深いことで、スーツなんてとりたてて特別な体の動きを必要としないように思えるが、どうやらそうではないらしい。サラリーマンは、知らず知らずのうちにスーツに体の動きを合わせていくようである。体にスーツを合わせるのではない、スーツに体の動きを合わせるのだ。
そうやって、少しずつ、おそらくは知らず知らずのうちに、新入社員は会社に体を合わせていくのだろう。染まると言ってもいいし、こなれると言ってもいい。