人間の能力について

 相変わらず唐突な話題で申し訳ないが、超能力というものがあるとかないとか言われる。

 わたしがガキの時分、ユリ・ゲラーという人が来日して、大変に話題となった。テレビに出て、スプーンを曲げ、テレビを通じて全国の時計を直す、ということをやってみせた。

 確かに(トリックでなければ)目覚ましいことではあったのだが、しかし、改めて考えてみると、だから何なのだ、とも思う。スプーンを曲げるという技術が何の役に立つのかよくわからない。まあ、ユリ・ゲラー氏がスプーン工場に勤めなくてよかったとは思うし、もしかしたらスプーンの需要を少しばかり持ち上げる効果はあるのかもしれないが、どうもあまり役に立つようには思えない。時計を直すというのもそうで、ユリ・ゲラー氏が時計屋の主人にでもなればいくらか役に立つ能力なのかもしれないが、それ以外の用途というものを、わたしは思いつかない。

 人間は、ドライバーでネジを締めるとか、チャックの仕組みを考案するとか、あるいは針と文字盤で時間を計ることを考え出すとか、なかなか壊れない時計を大量生産する、という能力のほうがよほど凄いのであって、スプーンを曲げる人より、うまい炒飯を作れる人のほうが、少なくともわたしの中の星の数は多い。ユリ・ゲラー氏もあのまま日本にいついて寄席芸人になれば人の役に立てたのに、と思う。