野球のルールを言葉だけで説明する

 言葉というのは大変に便利かつよくできたもので、たいていのことは言葉で表現できると信じられている。

 しかし、必ずしもそうではないことは明らかで、例えば、「野球を知らない人に(絵や図や写真を一切使わず)言葉だけで野球のルールを理解させる」なんてことができるだろうか。

 サッカーなら何とかできそうな気はする。基本は、長方形をしたゴールの中に手を使わないでボールを入れる、ということだ。オフサイドのルールはちょっと説明が難しいが、まあ、何とかなるだろう。

 しかし、野球は大変である。投球や打撃、塁の説明くらいはどうにかできそうな気がするが、ストライク、キャッチアウトの説明はなかなかの難事だと思う。

 例えば、Wikipediaの「野球の概要」のページからストライクについての記載を引用してみよう。

次の条件に当たる場合には、ストライクが宣告される。


・打者がバットを振ったが、ボールがバットに当たらなかった場合(空振りという)。
・投手の投げたボールが本塁の上で、かつ、打者のひざより上、胸よりも下の高さ(ストライクゾーン)を通過した場合。打者が振らずにストライクになった場合を見送りという。
・打者のバットにボールが当たったものの、ボールが鋭く捕手のミットに向かって飛び出し、捕手がそれを地面に落とさずに捕球した場合(これをファウルチップという)。(先に地面に落ちた場合や、捕手が正規の捕球を出来なかった場合は、打者は打ったものと見なされファウルボールとなる。)


→ 野球の概要 - Wikipedia

 もしわたしが野球を見たことがないなら、これらの説明を理解できる(あるいは理解しようと忍耐する)自信がない。しかも、ここにはファウルボールについての規定が入っていない。

 割に簡単に思えるホームランの説明だって、言葉にするとなかなか大変だ。

打者が打った場合のルール


フェアゾーン内のフェンスの向こう側や川など、これ以上球を選手が追っていけない所に打者が打ったボール(打球という)が出た場合


打球がバウンド(着地)せずに出た場合は本塁打(ホームラン)となり、打者はアウトにされることなく 4 つ(本塁まで)進塁することができる。バウンドした後にフェンスの向こう側(ファウルゾーンかフェアゾーンかを問わない)に出た場合打者はアウトにされることなく 2 つ(二塁まで)進塁することができる(日本ではこれをエンタイトルツーベースと呼んでいる。安全進塁権を参照)。

 こうやって見てくると、サッカーに比べて、野球は随分複雑で、人工的で、不思議なスポーツだと思う。

 野球のルールを言葉だけで理解することと、税法を理解することのどちらが大変だろうか(参照 →「悪文」id:yinamoto:20090113)。いい勝負だと思う。

 しかし、体験としては小学生のガキだって野球のルールを理解しているわけで、そう考えると、人間の理解力というのは大したものだなあ、とも思うのである。