うちの近くに、男向けのカジュアルな服を扱っている店がある。「閉店セール」と書かれたボードや布が店の前のあちこちを飾っている。
わたしの知る限り、たぶん、もう3、4年は閉店セールをやっている。
いつまでたっても閉店しないのだなあ、と思っていたら、半年ほど前から「完全閉店セール」という言い方に変わった。
いよいよ本当に店をやめるのか、なんせ「完全」だもんなあ、と思ったが、その後、いっかな店を閉める気配がない。
相変わらず店先には「完全閉店セール」の文字が躍っている。
あの「閉店セール」というのは、おそらく、在庫処分なら価格が安いに違いない、と客に思わせる作戦なのだろう。
その店の「閉店セール」がなぜ「完全閉店セール」に変わったのかは知らないが、「閉店セール」では効果が薄いと店長が考えたのだろうか。
客が、ムム、完全デアルカ、ソレハ安イニ違イナイ、と考えるかどうかはわからないが。
しかし、店の前を歩いていて気がついた。
店というのはいつかは終わるものである。
早い店は半年で終わるし、長い店は何十年後かに終わる。
この店の「閉店セール」というのは、閉店する“から”ではなく、とにかく閉店する“まで”セールを続けるということなのだろう。
言葉に嘘はない。いつかは店を閉めるんだから。