ウニ丼もどき

 突発的に好奇心に駆られることがあって、昨日がそうだった。


 何年か前に、「○○に○○をすると、○○の味になる」という話題が流行ったことがある。
 わたしは当時、試してみるほどの興味はわかず、ふーん、と聞き流していた。


 でもって、昨日、某所で「プリンに醤油をたらすと、ウニの味になる」という一節を見かけ、なぜだか俄然、好奇心に駆られた。


 コンビニでプリンを買ってきて、醤油をたらしてみた。おそるおそる、という言葉を頭の中で浮かべながら、一口食べてみた。


 確かに、ウニの味がする。


 もっとも、プラスチック容器に入ったプリンを丸ごとウニにして食う気にはなれなかったから、残りはプリンとして食べた。


 そうして、わたしの脳裏に妖しの想念が湧き上がった。“ご飯にプリンをかけて、醤油をたらせば、ウニ丼になるんではないか”。


 プリン+醤油=ウニ
 ご飯+ウニ=ウニ丼


 したがって


 ご飯+プリン+醤油=ウニ丼


 という論理は、少なくとも数学的にはピタゴラス関孝和も否定できぬであろう。


 晩飯時に、またプリンを買ってきた(コンビニの人は、やたらとプリンの好きな人であるなあ、と思ったかもしれぬ)。
 飯を炊き、丼に盛った。
 容器の蓋を開き、プリンを箸でご飯の上に落とす。
 醤油をたらす。


 こわごわ、という言葉を頭の中で浮かべながら、一口食べてみた。


 デンプン質としか言いようのないご飯の味に混じって、甘ったるいプリンの味が口中に広がる。その2つに全くとけ込まずに舌を刺激する、醤油のしょっぱさ。


 それは、ご飯にかけたプリンに醤油をたらした味、という以外の、何物でもなかった。


 わたしは、丼の中で奇態な様相を呈しているご飯+プリン+醤油を前にして、“もったいないから”という言葉に背中を押されつつ、暗澹たる思いに囚われたのである。