小林秀雄講演 第2巻―信ずることと考えること [新潮CD] (新潮CD 講演 小林秀雄講演 第 2巻)
- 作者: 小林秀雄
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/01
- メディア: 単行本
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小林秀雄が晩年に行った講演のCD。
小林秀雄の講演は面白い、と前々から聞いていたのだが、初めて聞いた。
確かに、面白い。面白い、と言うのには随分と品の下った部分もあって、解説にも書いてあるが、語り口調が古今亭志ん生によく似ているのである。
古今亭志ん生の、特に脳溢血で倒れた後。
ロレツのうまくまわらない(小林秀雄は脳溢血はやっていないと思うが)、ふわふわした口調。しゃべり方もだが、声の質自体が似ているように思う。
小林秀雄は東京の下町生まれで、演芸好きだったらしい。そのせいもあるのだろうか。講演用に志ん生の口調を研究した、という話も聞いたことがあるが、本当かどうかはわからない。
小林秀雄、というと、何となくとっつきにくい印象がある。「逃げる、ごまかす、やり過ごす」を人生の三大方針としているわたしなぞは、つい敬遠してしまうのだが、講演は志ん生口調のおかげもあって、入りやすい。でもって、聞いているうちに引き込まれていく。
内容は、ユリ・ゲラーの話から始まって、科学という方法論の限度、物事を捉えるやり方、魂の実在、柳田国男、人間の感受性、人と人/対象との交わり、個人と徒党、と、こうやって文字でまとめるとビビってしまうが、平易にわかりやすく話している。あちこちで感銘を受けた。
じゃあ、その感銘をきちんと消化できたか、全てを理解できたか、というと、これが情けないことに、そうはいかなかった。あちこちの話を、断片的に受け取るばかりである。
聞く側(おれ)の器が小さすぎ、おまけにひびで漏るもんだからしょうがない。
ともあれ、「話し口調が志ん生だ」という程度の興味でも、十分に聞く価値があると思う。