船首

 無用なことばかり考えている。


 帆船などの木造船以前の船首には、たいてい像が掲げられている。


 Googleの画像検索で「船首像」と検索してみると、いろいろな船首像を見ることができる。


→ Google画像「船首像」


 ライオンや龍、女神様、なんていうのがメジャーなようだ。


 あれはどういうことなのだろう。
「船首には何か像を掲げるものだ」という通念があったのだろうが、どうしてそういう通念が生まれたのだろうか。


 呪術的な意味、つまり、船に龍やライオン、女神様を憑依させることで、危険な目に遭遇しやすい船を守ろう、雄々しく波頭を乗り越えていこうよ船長さん、ということなのかもしれない。


 考えてみれば、その手の感覚は、モダンでフラットでクールでマテリアルな現代にも残っていて、クルマのジャガーロールスロイスの先端に付いたミニチュアは、何やら呪術的である。クルマにパワーと権威を与えてくれるような気になる。


 西洋型の帆船はしばしば船首が突き出た形状になっている。船嘴、衝角などと呼ばれるようだ(用語の違いは知りません)。


 昔の軍艦は、敵船に頭から突っ込んでいって、衝角で船腹に穴を開ける、という戦法をよくとったらしい。
 今考えると乱暴な戦術に思えるが、当時の軍艦は乱暴な乗り物だったのだろう。


 攻撃する側からすると、船首のライオンや女神様が真っ先に突っ込んでいくわけで、「行けー!」、「いてまえー!」と、大阪弁で言ったかどうかは知らないが、何かこう、血湧き肉躍る気分を高めてくれたのではないか。


 やられる側からしても、突っ込んでくるライオンや女神様には、心理的圧力があったろう。


 そう考えると、あれはやはり、ライオン、龍、女神様だからいいのであって、コアラやスピッツでは迫力不足に違いない。船首がスピッツ。ヤな船だ。


 まあ、やはり、ジャガーの一番前は、跳躍するジャガーだからジャガーな気分に浸れるわけで、優しいお目めのキリンさんではダメなのだろう。


 そういえば、昔、大村益次郎を船首像にしてみたことがあったな。



 何となく残酷な感じがするのはなぜだろう。生け贄のイメージか。