んが

 がんにかかった人、あるいは、その身のまわりの人、がんで親しい人を失った人の話を見聞すると、重苦しい気持ちになる。


 わたしも、祖父が比較的若いうちにがんで亡くなっており、他人事とは思えないところがある。


 がんは、現代で最も厄介で、不安をつのり、時にショッキングな病気だろう。
「がん」という二文字を見ただけで、何か、平静でいられない気になる。


「がん」という音も、何か、厳しい。強い。心を圧するものがある。


 あれが「んが」だったら、どうなのだろう。


 肝臓んが、喉頭んが、皮膚んが、乳んが、肺んが、大腸んが。国立んがセンター。んがジー。関係ないか。


「写真をご覧ください。ここに影がありますね。腫瘍、それも悪性の可能性があります」
「ということは」
「ご主人は、いわゆるんがである可能性があります」
「んが……」
「その他にも、こことここに影のようなものがあります。んがが転移していることも考えなければなりません」
「んが……」


 すみませんでした。