ジュータン的ギャグ

 1970年に、よど号ハイジャック事件というのがあって、赤軍派の犯人グループが飛行機を乗っ取り、北朝鮮に亡命した。
 いまだにこの事件は尾を引いていて、日本政府と北朝鮮政府の間で、犯人を帰せの帰さないの、帰るの帰ら(れ)ないの、という話になっている。


 実にどうもコマったもので、若い人間が浅薄なリクツと願望だけで突っ走るとロクなことにならないという、見本のような事件だと思う。


 犯人グループは日本を発つ際に「われわれはあしたのジョーである」(原文では“明日のジョー”)という声明文を残したんだそうで、これを聞いた赤塚不二夫は「なぜ『われわれは天才バカボンのパパなのだ』と言わないのだ!!」と大いに怒ったという。


 素晴らしい。


 発想が幼稚な感じがする「われわれはあしたのジョーである」より(作品が幼稚という意味ではない)、「われわれは天才バカボンのパパなのだ」の宣言のほうがよほど高級である。


 当局も、「天才バカボンのパパか。それじゃあ、しょうがないよな」と諦めるほかなかったろう。諦めないか。


 物事のありようというものを、ジュータンを一気に引き抜くようにひっくり返す、赤塚ナンセンスの真骨頂と言うべきエピソードだと思う。国会で青島幸男が決めたのだ。