スノビズムという言葉があって、俗物根性、紳士気取りなどと訳される。スノビズムの人をスノッブと呼ぶ。
わたしのよく使う研究社の英和辞典で「snob」を引くと、
げす, 紳士[通人]気取りの俗物, 地位[財産など]の崇拝家;上にへつらい下に横柄な人物.
と、ひどい言いようである。辞書の編纂者の中にこんなタイプの人がいて、この項の担当者が当てつけで書いたんじゃなかろうか、などと想像してしまう。いや、知らんけど。
英語のニュアンスはよくわからないけれども、外来語の「スノッブ」という言葉には、“お高くとまりやがって”という反感が混じっている。
日本三大スノッブと言えば、おそらく、漱石の「坊っちゃん」の赤シャツ、赤塚不二夫のイヤミ、そして、トニー谷だろう。
この3人、いずれも西洋文化の崇拝者であるところが共通している(トニー谷は崇拝者のパロディと呼ぶべきだろうが)。
赤シャツは坊っちゃんが赴任した松山の中学校の教頭で、画家のターナーがどうの、ラファエルがどうのと知識をひけらかして、坊っちゃんを辟易とさせる。
イヤミはおフランス帰りなのに、言葉はなぜか「ミーは〜ザンス」と、英語と昔の山の手奥様言葉のチャンポンである。シェー!
トニー谷は、戦後のジャズ・ブームの中、司会者として有名になった。
「レディース・アンド・ジェントルメーン、アンド、おとっつぁん、おっかさん、グッドアフタヌーン、おこんにちは」などというセリフがいかにもいかがわしく、嫌われながら人気者になったという、不思議な存在だったらしい。
我々――と簡単に一緒くたにしてはいかんのだろうが、日本には、欧米への憧れと、欧米にヤラレテイル感と、その裏返しとしての攘夷意識が根強くあって、それらが入り混じって、スノッブに対する反感となるように思う。
赤シャツ、イヤミ、トニー谷。いい取り合わせだ。スルドく日本の文化的状況というものを表しているのではないか。
ずうとるびがやって来るシェー!シェー!シェー!。何だかわからない。
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「今日の嘘八百」
嘘六百八十一 最後の一葉がなかなか落ちないので、ジョンジーは100歳過ぎてまだベッドの中。