午後4時頃、遅いと昼飯というか、早い夕飯というか、ま、そんなようなものを摂ろうとラーメン屋に入った。
割に広い店である。注文して、ぼんやりしていると、横綱がどうこう、という話が聞こえてきた。
後ろのテーブル席にいる五十がらみの夫婦が相撲の話をしていた。
旦那のほうは松方弘樹みたいな顔で、競馬場にでもいそうなタイプ。奥方のほうは塩沢ときにちょっと似ている。もちろん、あんな頭はしていない。
テーブルにビール瓶が2本立っている。平日の午後だから、店でもやっていて、休みの日なのか。
話は、奥方が3喋れば、旦那が1喋るというふう。奥方のほうは、2人揃えばペラペラ喋り続けるタイプのオバサンらしい。
白鵬は偉い、という話をしている。少年時代にモンゴルから1人でやってきて(正しくはグループで来たそうだ)、どこの部屋からも相手にされず、帰国する前日にようやっと入門がかなったとか、日本語を一生懸命覚えたとか、あの静かな目が素晴らしいとか、土俵に立った姿が不動明王のようで背後に炎が見えるようだとか、云々。
「あれこそ、横綱よねえ」と奥方。
その分、朝青龍の分は悪いようである。腰の故障も、解離性障害も、「あんなの、嘘に決まってるじゃない」。
初場所千秋楽の白鵬と朝青龍の取り組みを挙げて、「(朝青龍が)ブン投げられちゃってさ、不様ったらないわよねえ」。おそらく、溜飲を下げた口なのだろう。
“でもね、奥さん”と内心、思った。“朝青龍が、内舘センセの唱えるようなつまらない品格なんぞ備えていたら、あんたは、そのブン投げる快感を味わうことができなかったのですヨ”。
もちろん、奥方は、背中を向けた馬鹿男がそんなことを考えているなどと知るわけもなく、「お父さんは相撲で言えば、高見盛よねえ」と言って、ケラケラ笑った。
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
「今日の嘘八百」
嘘六百五十一 内舘センセイは朝青龍に文句があるなら、正々堂々、土俵の上で決着をつけるべきである。