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映画、音楽、スポーツ、小説とジャンルはいろいろだが、稀に“うひゃーっ”とひっくり返る圧倒的な何かにぶつかることがある。
漫画の「鈴木先生」もそんなもののひとつだ。
漫画に詳しくないので、「鈴木先生」がどのくらい世の人に知られているのかはわからない。
今日は全く知らない人に向けて書く。すでに読んだ方はさっさと諦めていただきたい。
「鈴木先生」は、最初、静かに始まる。
誠実な中学校の青年教師が、生徒の心理の謎を解きながら、生徒ともに成長していく様を描く学園ドラマなのだなあ、などと、鼻クソほじりながら油断していると、「あれ?」と調子がだんだん狂っていく。
第1巻は比較的おとなしい(後で思い返すと、実は黒雲が広がりつつあったことに気づかされるのだが)。
ところが、第2巻以降、どんどん過剰になっていくのだ。
何が過剰って、絵の線が過剰、登場人物の脂汗が過剰、顔の影が過剰、セリフの量が過剰、鈴木先生の自問自答が過剰、鈴木先生の狼狽ぶりが過剰、鈴木先生の妄想が過剰、と、過剰を旅行鞄にぎゅうぎゅう押し込んでチャックを無理矢理閉めてしまったような具合である。
特に、第3巻の生徒・竹地君が凄い。
竹地君はいわゆる「メガネ君」で、クラス会議で孤立し、自我を守ろうとすればするほど泥沼にはまっていってしまう。その崩壊っぷりが見事なのだ。
例えれば、武器庫を守るため周囲に手榴弾を投げたら、全て投げ返され、武器庫に飛び込んでどんどん爆発して、誘爆が誘爆を呼び、ドッカンドッカンドッカンドカーン、てな具合で、凄えのなんの。
「鈴木先生」のボルテージの上がり具合は、単行本の帯のエピソード紹介にも表れている。
まずは比較的理性的な第1巻。
給食中の生徒の問題行動――その謎を追う。…「@げりみそ」編
またしても給食問題!酢豚存亡の危機!!…「@酢豚」編
生徒の交際問題、そして教師の性欲問題!!…「@教育指導」編
地鳴りが響き、噴火が始まる第2巻。
教師としての“レーゾンデートル”を問われてしまう。…「@人気投票編」
戦士としての束の間の休息。…「@昼休み」編
カミサマ・小川との出会いが描かれる。…「@嵐の前夜」編
「長グツ」と「長グソ」に始まる教室内暴風雨。…「@恋の嵐」編
溶岩流が一気に人々を襲う第3巻。
竹地の脳の血管が切れやしないか心配で。…「@恋の嵐」編
小川の言葉は鈴木先生を“昇天”させる!!。…「@恋の終わり」編
帯に載った鈴木先生の表情は、巻を追うにつれ、話のテンションがエスカレートしていくことを如実に語る。
ちなみに、この作品、編集者もイカしている。
本の終わりのほうに次巻の予告が載っているのだが、そのコピーが秀逸なのだ。
彼のループタイと脂汗は誠実の証!
次巻第3巻では生徒達の魂と魂が激しくぶつかり合う!!
握りこぶしで待て!!
(第2巻より)
鈴木先生に「逝ってもいい」と言わしめた少女、小川がついに告白!?
次巻第4巻もあなたをのたうちまわらせる!!
心して待て!!
(第3巻より)
「握りこぶしで待て」……。「あなたをのたうちまわらせる」……。
で、ついこの間、第4巻が出たわけだが、うーん。
ボルテージが第1巻の頃に戻ってしまったかな。
まあ、第3巻の盛り上がりが異常だったので、一回、クールダウンしてもいいのかもしれない。
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次の異常な盛り上がりに期待である。おれは握りこぶしで待ってるぜ!
p.s. ジブリ。悔しかったら、こういう漫画をアニメ化してみろ!!
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嘘六百三十四 背中に日本刀を背負うと、腕の関節の構造上、抜くことができない。