輪廻転生

 輪廻転生という、現象かファンタジーか考え方かわからないが、まあ、そういうものがある。


 死ぬと他の世界や他の生物に生まれ変わる、というもので、最初はインドあたり(えらく大ざっぱだが)で唱えられたらしい。


 動物が植物や他の動物を食って成長していく様や、人間も含めて動物の死骸から植物が生えてくる様を見て、発想したことなのだろうか。
 いろいろ想像すると、興味は尽きない。


 ま、仮に輪廻転生があるとして、いきなり他の生物、例えば、魚やなんかに生まれ変わるのだろうか。それともお裁きや辞令のようなものが下る場があるのだろうか。


 いきなり生まれ変わるのなら、生まれ変わったときにはもう人間の意識がなくなっているんだから、あまり困らないように思う。


 パッ、と視界が開けたら子亀で、亀なりの感覚で海に向かってのそのそ歩いていくうちに、蟹に食われてしまい、パッ、と視界が開けたらカマキリの子どもで、カマキリなりの感覚でしゃかしゃか歩いていくうちに、トカゲに食われてしまい、パッ、と視界が開けたらナマケモノの子どもで、ナマケモノなりの感覚でぼんやりしているうちに、鷲に食われてしまい……と、どうも食われてばかりだが、他の生物に生まれ変わったとしても、ハナっからその生物の了見になっているんなら、人間以外の生物でいるからといって別に気にならないだろうと思う。


 問題は、一時的にせよ、人間の意識のまま、あの世に行く場合だ。
 あの世の仕組みがどうなってるんだか知るよしもないが、仮に通俗的に閻魔様のお裁きを受けるとしようか。


閻魔様:ハイ、次。
死人A:は。
閻魔様:(記録を見て)んー、貴様は生前、いろいろ女を騙してきたようだな。ほほお、生きてた頃はなかなかいい男ではないか。
死人A:恐れ入ります。
閻魔様:馬鹿者。褒めているのではないわ。悔しいから、貴様の来世はラブカ!
死人A:ラブカって、いったい……。
閻魔様:うるさい。わしは忙しいのだ。知りたければ、次の間に行って、自分で見てみろ。


(次の間に行って)


死人A:あの、私、来世はラブカになるんだそうですが。
死人B:ラブカ? 何だ、そりゃ。
死人A:さあ?
死人B:そこにパソコンがあるから、調べれば?
死人A:はあ、こっちの世界にもパソコンがあるんで。
死人B:IT化なんだとさ。
死人A:(パソコンで検索して)うわ。
死人B:どんなんだった?
死人A:こ、こんなんです。



なに、この脇んとこ。気色わるっ! 「生きた化石」、「下等なサメ」って、勘弁してくださいよ!
死人B:まだいいじゃないか。おれなんて、ヤツメウナギになるんだぜ。
死人Aヤツメウナギって、薬やなんかになるやつでしょ。実物を見たことはないですが。
死人B:見たら驚くぜ。



死人A:ぎょえええ。
死人B:生まれる前に死にたくなってきたよ。
死人C:えーと、次の間っていうのはこちらですか。
死人A:ええ。あなたは何になると?
死人C:ピパピパ、ですって。何か、可愛らしい名前ですよね。
死人A:ふーん。
死人C:閻魔様が「貴様はピパピパだ。ふふっ」って、含み笑いしましてね。
死人B:ま、とにかく、パソコンで調べてみな。
死人C:わ。
死人A:何です?
死人C:わわ。この背中の、もしかして卵?



死人B:うーん、来たねえ。
死人C:あの含み笑いは……。
死人B:お。こんなのもあるよ。



死人B:うわー。
死人C:うわー。


 えー、どうもスミマセン。書きながら、わたしも気絶しそうになりました。

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「今日の嘘八百」


嘘六百二十 本当に申し訳ないことをしたと思っております。