ゆくゆくは

 いろんな人が亡くなっていく。


 わたしは、近しい人を亡くした経験が少ない。それでも、遠い人、そこそこ近い人が亡くなっていく。
 少しずつ近づいてくるような感覚はある。


 自分が生まれたばかりの頃がこんなふうだったとする。



 何しろ、こちらは新参者だから、まわりはみんな生きている。
「出てきてみたら、何だコレハ。バカヤロー!」と怒りを込めて、「おぎゃあ」と泣いてみたのだが、誰もそのメッセージに気づくことはなく、それでもみんな生きていた。


 やがて、少しずつ欠け始める。



 だんだん亡くなっていく。



 今のわたしはこんなところか。


 もちろん、新しく生まれてくる人もいるし、今まで遠かった人が急に近くなったり、近かった人が遠くなったりもする。
 しかし、人というものが一方向にずりずりズッている以上、そりゃあやっぱり、得る人より失う人のほうが多くなる。


 おそらく、いずれはこんなふうになるのだろう。



 そうして、最期が過ぎたとき。



 まあ、実際には死んだ後のことはわからない。
 どうなるか知りたい人もいるだろうが、わたしはなぜかあまり興味がない。逝けばわかるさ、である。


 ま、こんなふうになっては、困るが。


                  • -


「今日の嘘八百」


嘘三百十二 人に夢と書いて「はかない(儚い)」と読むが、人に現実と書いて「いやはや」と読む。