受話器を握る手

 人生には本当に謎が多い。


 わたしの人生の謎第五百二十一番に記されているのが、「受話器を握る手」という項である。


 固定電話の場合、たいていの人が受話器を左手で握る。世の中には右利きの人のほうが多いのに、不思議だ。


 わたしも左手で握る。


 受話器を握る手は親が躾るものなのかどうかわからないが、少なくともわたしには、右手で握って親に怒られた記憶はない。
 気がつけば、左手で握っていた(物心つく前に教えられたのかもしれないが)。


 もっとも、わたしの場合、元々は左利きで、小さいうちに物は右手で持つように強制された。


 おかげでどちらの手もロクに使えず、「お前は本当に手かっ? 実は足じゃないのかっ?!」と手に怒鳴りつけるくらいの不器用になってしまった(と信じている)のだが、そんなことは関係ないか。


 ともあれ、左利きの名残が受話器の握り方に残っている可能性はある。


 しかし、世の右利きの人も、たいてい受話器を左手で握る。


 わたしには子供がいないのでわからないのだが、子供のいらっしゃる方は、受話器をどちらの手で握るか、教えたことがあるだろうか。
 つい右手で受話器をとった子供に、「左手で持ちなさい!」とムチでシバいて思い知らせる、なんてこと、あるのか。


 どうも、想像しにくい光景である。


 右利きの人が、左手で受話器を持って便利なことが、ひとつだけ考えられる。
 電話をしながら、右手でメモをとれることだ。


 しかし、勤め出すまで、そんなシーンはあまりないだろう。
 メモを取るときだけ左手に持ち変えればいい話だし、物事の習慣がつく幼少期に、電話しながらメモをとる、なんてことはまずない。


 興味深いのが、携帯電話を持つ手だ。


 わたしの場合は、話すとき、左手で持つ。右手で持つと、奇妙な感じがする。


 しかし、人に訊いてみると、右手で持つ人、左手で持つ人、両方いるようだ。


 右手で持つという人に、「でも、(固定)電話では受話器を左手で持つんですよね?」と訊ねると、「そうですね。不思議ですね」という答が返ってきた。


 みなさんは、固定電話の受話器、携帯電話、それぞれどちらの手で持つだろうか。
 そして、それはいつ、どういうふうにしてそうなったのだろうか。


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「今日の嘘八百」


嘘二百 「島国根性」は英語で「ガッツ・オブ・ジ・アイランド」と言う。