電気自動車の接近音

 で、電気自動車の近づいてくるときの音だが、どんなのがいいだろうか。


 最初は「どきねィ、どきねィ!」とか、「ごめんなさいよ、ハイ、ごめんなさいよ」とか、「暴れ馬だァ!」などといったサンプリング音を考えたのだが、「大江戸」的ダサ・ユーモアで、よろしくない。わたしは石原慎太郎ではないのだ。


 スピードに合わせて、鼓を打つ、というのはどうだろう。
 低速なら、「イョ〜ぉ、ポン。イョ〜ぉ、ポン」。
 スピードが上がるにつれ、「ポン、ポン、ポン、ポン、ポンポンポンポンポポポポポポポポポ……」とテンポもアップするのだ。
 そうして、赤信号のところで、「イョ〜ぉ、ポポン!」。


 電気自動車が普及したら、そこらへんで能楽を踊り狂っているような騒ぎになるだろう。
 うるさくて、しょうがない。


 いかにもありえそうなサービスが、電気自動車のドライバーが、携帯電話の着メロのように、自分の好きな曲を選べる、というものだ。


 しかし、これも考え物である。
 街を歩けば、ただでさえ、聴きたくもない曲を無理矢理聴かされる世の中だ。渋滞の横なんぞ通ったら、「自己主張」の渦巻きに巻き込まれ、うんざりするだろう。


 メロディというのは、はっきりしたもの、わかりやすいものは、何度も聞いていると飽きる。
 抽象的、という言い方も変だが、わかったような、わからないようなものが、電気自動車の接近音にはたぶん、いいのだろう。


 クルマが近づいているとわからねばならず、かといって、うるさすぎてもダメ。人が飽きるもの、不快感、うんざり感を覚えるものもダメ。
 このプロジェクト、なかなか難しいように思う。


 見事、そういう音を作った者には、おかみから金子三千両が遣わされるという話だ――かどうかは知りません。


追記:結城さんのアイデアに脱帽(id:hyuki:20060724)。それは思いつかなかった。金子三千両(気持ちだけ)。


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「今日の嘘八百」


嘘百九十五 地獄で仏に会ったが、穏やかな声で「諦めなさい」と諭された。