ヘビメタ

 最近のメタル方面がどうなっているのかは知らない(メタル方面といっても、製鉄やニッケル鉱の話ではない。音楽のほうだ)。


 わたしが血気盛んだった十代の頃、メタルと言えば、ヘビーメタル(以下、ヘビメタ)しかなかった。スラッシュ・メタル、デス・メタルが登場したのはもう少し後である。


 でまあ、どういうわけか、その頃のヘビーメタルと言えば、「悪魔の〜」とか、「背徳の〜」とか、「地獄の〜」とか、そんな曲名が多かった。


 恥を忍んで告白すると、わたしは高校の頃、ヘビメタにはまっていた時期があた。それこそ悪魔の誘惑に乗ってしまったのだろう。忘れたい過去である。


 今のわたしはメタルと道路工事現場の音に、大した違いを感じない。メタル・ファンの人は道路工事現場の横でヘッドバンギングしてみたらどうだろう。


 ヘビメタの曲名を、いろいろと作ってみたいと思う。


 やり方は簡単で、冒頭に「悪魔の〜」とつけ、次の言葉は、広辞苑をぱっと開いて目についたものを選ぶのだ。


 やってみよう。


「悪魔の筆下ろし」


 いきなり特級の曲名が来た。まあ、悪魔にも、いろいろと青春の通過儀礼があるのだろう。


「悪魔の徒然草


「(ダカダカダカダカ♪)つれづれなるまゝにィ〜、日ぐらしッ、処刑台にむかひてェ〜、ウォ〜ウッ!」などとシャウトするのだろうか。


「悪魔の修学旅行」


 悪魔の世界も案外とのんきなようである。


 次は「背徳の〜」で行ってみよう。


「背徳の古今亭志ん生


 まあ、若い頃、相当、放蕩したとは聞くけれども。
 それより、広辞苑志ん生の名があるのに、驚いた。


「背徳の駐在」


 警官のことだろうか。「背徳のおまわりさん」としたほうが、馬鹿馬鹿しさが際立つかもしれない。


 次は「地獄の〜」。


「地獄の恐縮」


 よくわからない。地獄で恐縮するのか、それとも地獄自体が「や、どうも、これは恐れ入ります」と恐縮してしまうのか。


「地獄の鶏」


 前にも書いたが、わたしは小学校時代、学校の鶏小屋でオンドリに追いかけ回され、ひどい目にあったことがある。
 ニワトリ地獄、というものがあるとしたら(亡者がひたすらニワトリに追いかけまくられるのだ)、わたしは遠慮したい。善行積みます。


「地獄のこってり」


 んー。ラーメンのスープか何かの話だろうか。単に、辛くてこってり、というのではつまらない。
 まあ、人間が大釜で煮られて、スープをとられる、なんていうのがいかにも地獄的な絵だろうけれども、「地獄のこってり」と来ると、これまた不思議にのんきな風がある。


 ヘビメタバンドの皆さん、これらの題名でひとつ、曲を作ってみてください。Ah〜、デヴォ〜!


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「今日の嘘八百」


嘘百九十二 八犬伝の伏姫は実は四姉妹で、お手姫、お預け姫、チンチン姫という妹がいる。