サッカー論・狩猟民族編

 サッカー・ワールドカップをきっかけに、さまざまなサッカー論が交わされている。


 各国の国民性、民族性とその国の代表チームを結びつける議論も多い。


 文化とサッカーがどういうふうに関わっているのか、というのは興味深い話だけれども、中には明らかに間違っていると思われるもの、あまりに安易なものもある。


 意外なほどはびこっているのが、欧米人=狩猟民族説、日本人=農耕民族説である。


 これ、論じる人があまり物を考えていない、あるいは考えることができない、というふうに見られかねないので、ホント、やめたほうがいいと思う。


 戦前まで、日本人の中に農業に携わる人が多かったのは間違ってないだろう(もちろん、漁師もいれば、職人も、商人も、大工も、役人もいたわけだが)。しかし、農耕民族とおおざっぱに言い切っていいかは、案外、難しい。


 ま、それより、欧米人=狩猟民族、である。


 少なくとも、今までわたしは、狩猟を生業とする欧米人に会ったことがない。おそらく、人口統計をとっても、狩猟で暮らしを成り立たせている人は極めて少ないだろう。趣味で狩猟をする人だって、少ないはずだ。
 パンやジャガイモやビールを狩猟できるという話も、寡聞にして聞いたことがない。


 歴史的にも、ローマ共和国ローマ帝国が地中海周辺でブイブイ言わしていたとき(おおざっぱに言って、二千年プラスマイナス数百年ほど前)、支配下の地域では農耕・牧畜が主だった*1
 ローマ帝国の食料が狩猟でまかなわれていた、なんていう話は聞いたことがない。


 ローマ帝国の北にはゲルマン民族と総称される人々がいた。
 二千年ほど前には、狩猟・牧畜・農耕を主としていたようだ。まあ、この時点では狩猟の占める割合も結構、あったのかもしれない。
 しかし、定住と農耕化が進み、少なくとも千数百年前には、農耕・牧畜が主となったようだ。


 千数百年前といえば、日本では奈良時代平安時代初期である。それよりさらに昔のことを持ち出して、現在のサッカーと結びつけるのも、メチャクチャな話である。


 やってみたことはないが、欧米人(このくくりも、あまりにおおざっぱだが)に「あなた方は狩猟民族ですよね?」と訊いたら、キョトンとされるか、大笑いされるのではないか。


 欧米人=狩猟民族って、いったい誰が言い出したのだろうか、こんなトンマな説。

*1:もちろん、漁業、商業、工芸、建築も重要な産業だけれども、ややこしくなるので置いておきます。