NHKで、たまにアメリカのテレビのホーム・コメディをやっている。
シチュエーション・コメディと呼ぶらしいが、毎回、同じセットの中であれやこれやとドラマが進行する。
たまたまチャンネルが合ったときにしばらく見てみるのだけれども、ちっとも面白いと思ったことがない。
小さな女の子がおしゃまなことを言ったり、大人達がおバカなことをやったりするたびに、わっと笑い声があがる。
コノ人達ハ何ガソンナニオカシイノダロウカ? 今ノハ大笑イスルホドノギャグダッタロウカ?
などと思うのだが、ま、いささか傲慢ではある。
わたしが笑えないのは、ぬるいシナリオや、わざとらしい吹き替え(あれはあれなりに文化があるようだ)のせいもある。しかし、番組についてまわる笑い声も、かえってシラケさせる。
あの笑い声には、番組によって、いくつかの種類がある。
まず、実際に客を入れて、その笑い声を録音する手法。
この手法にも、客の自然な反応に任せておく場合と、ディレクターなどが手を回したりして客に笑うよう指示する場合があるようだ。後者の場合、客はサクラである。
それから、客を入れないで、スタッフの笑いを入れる手法。日本のテレビにはこの手法が多い。
馴れ合いのように感じて、わたしはあまり好きではない。
最後に、あらかじめ録音してあるさまざまな笑い声をSEとして編集時に入れる手法。
昔の、スタジオで撮ったドリフターズのコントは、この手法だ。
わたしは「ここで笑え」と指示されているみたいで――というか、実際、指示しているのだろう。どの手法も好きではない。大勢の笑い声から生まれる、変な安心感のようなものも嫌いだ。
ただし、スタッフの笑いを入れる手法には、演者を乗せる意味もあるらしい。
特に、舞台出身の演者は、テレビのスタジオでカメラを向けられると、調子に乗れないことが多いという。
彼らは、それまで、客の笑い声、反応を手がかりにやってきたからで、笑い声があると「お、おれは今、いい感じでやっているんだな」と確認できる。気持ちも乗ってくる。
逆に、笑い声がないと滑っているような気になったり、緊張感が増したりするようだ。
NHKで火曜夜11時にサラリーマンNEOというコントの番組をやっている。
コントによって出来不出来の差は大きいけれども、原則として、笑い声は入れないようにしているようだ。
笑い声に頼らない分、志の高さを感じる。そのほうが宙に放り出されるようなナンセンス感も際立つし。頑張ってもらいたいと思う。
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「今日の嘘八百」
嘘百五十二 箸を転がしてみたところ、十代の女性のうち58%が気味悪がって逃げたという。