マンションの名前

 例によって、「他人事にはポジティブ」という気質が出て、建築設計事務所耐震強度偽装問題はバレてよかったじゃないか、と思うのである。
 バレないまま大地震が来たら、大変なことになっていたろう。天網カイカイ、痒くてたまらず、というやつだ。


 ――などというのは、たぶん、半分合っていて、半分間違っているのだろう。
 問題の建築設計事務所(あるいは周囲の関係者)に偽装するメリットがあったのだとしたら、他にもきっと似たような偽装はあるのだと思う。
 ニセ札はバレない限り、ニセ札ではないのだ、という例の話だ。


 日本のどこだろうと、統計的にはいつか大地震が訪れる。いざというときのことを考えると、なるべく地べた付近にいたほうがいいように思う。


 まあ、しかし、たとえ地べたを這いずっていても、いきなりマンションごと倒れてきたら、ソレデオシマイである。
 そう考えると、もう、野っ原で寝袋暮らし、というのが一番安全かもしれない。


 えーと、そんな話をしたいわけではなかった。
 取り上げたいのは、偽装事件で出てきたマンション名の気恥ずかしさである。


 記しますよ。ええですか。


 セントレジアス船橋
 グランドステージ東向島


 セントレジアスですよ、グランドステージですよ。


 英和辞典で「grand stage」を引いてみたが、載っていなかった。
「grand」、「stage」それぞれで訳すと、「華やかなる舞台」、「壮麗な舞台」といったところだろうか。


 売る側の気持ちとしては、「華やかなる(人生の)舞台」という意味も込めたかったのかもしれない。ただの住居なのに。おでんも食うだろうに。晴れた日にはベランダに布団も干すだろうに。知らんけど。


 グランドステージのほうはどうやら同じ施主らしく、各地に華やかなる舞台を設けている。「グランドステージ川崎大師」というのもあるが、これなぞ、日本語で書くと、


 華やかなる(人生の)舞台・川崎大師


 である。


 住んでいる方には申し訳ないが、ちょっとそれはどうよ、と思うのだ。


 などと困ったようなウレシイような気分になっていたら、今日になって、新たにこんなマンション名が登場した。


 ラ・ベルドゥーレ白井駅前


「ラ・ベルドゥーレ」の意味は知らない。しかし、なぜか「尻すぼみ」という言葉を思い出すのである。


 わたしもあまり偉そうなことは言えないが、もう少し、冷静さとか、節度というものを思い出してもいいのではないか。ねえ。地震のとき、まずは落ち着いて行動するのが大事と言うし。


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