あの人々は今

 1970年代に20歳前後だった世代を、シラケ世代と呼ぶ。


 その前の世代は、全共闘だ安保反対だ角材だ火炎瓶だセクトだシンパだ不当逮捕だ総括だリンチだ内ゲバだと、わあわあ盛り上がった。しかし、どうも思った通りに世の中は動かなかった。
 それを下のほうで見ていたガキどもは、同じ世代になったとき、「んなこと言ってもねえ」と、シラケているふうに見えた。それでシラケ世代と呼ばれるようになったらしい。


 桃井かおりが年齢的にはシラケ世代である。「あんさあ、アタイさあ、今、ブルーなわけ。わかるぅ?」。若い頃の映画を見ると、「なるほどー、これはシラケてますなあ」と思う。


 1970年代に20歳前後というと、1950年代の生まれである。
 今、40代後半から50代前半の人々だ。
 サラリーマンで年功序列的な会社にずっと勤めていれば、そこそこの役職についているだろう。


 会社で今でもシラケているなら、ある意味、感動的なんだが。


(会議で)
部下A「部長、今こそ、この『バラダイン・スーパーX』で攻勢に出るときですよ。絶対に、シェアを奪回できます!」
部長「んー」
部下B「私からもお願いします。これは絶対、イケますって。商品モニターの結果も、市場分析の結果もバッチリです」
部長「んー、そうねえ。山田君、どう思う?」
課長「まあ、ボチボチってところで」
部長「そうねえ」
課長「(あー、つまんねー)」
部長「(あー、つまんねー)」


 この人々は、あと30年くらいすると天寿を全うする年になる。
 いまわの際に、一言。


「つまんねー」


 つまんねー、つまんねー、と、全員、シラケきって、天国に昇っていくのである。


 そうして、天国に着くと、背中に羽をつけ、ヘルメット姿で角材持った人々がいる。一足先に着いた全共闘世代の人々だ。
「我々は、我々に、我々の、我々を〜」。天国当局を相手に、「天国を民衆の手に返せ!」とか、「矛盾を止揚せよ!」とか、「天使と仏様は自己批判せよ!」とか、よくわからん要求を突きつけているわけである。


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