不老長寿

 中国の物語や史書(を元に書かれた読み物。史書そのものを読めるほどの学も根気もわたしにはない)を読んでいると、不老長寿を追い求める話がよく出てくる。
 不老長寿には、仙人や方士がよく関わる。おそらくは道教民間信仰のエリアに収まる話だろう。


 一方で、親孝行もよく出てくるモチーフだ。
 こちらは親、ひいては祖先崇拝にまつわる要素で、儒教民間信仰から来ているのだと思う。


 さて、では不老長寿と親孝行、道教儒教民間信仰を仲立ちにタッグを組むと、どんな話が生まれるか。


宋の時代、嵩山の近くに住む男が、病んだ老母の薬草を採るために山に入った。薬草がなかなか見つからないので、つい山の奥まで迷い込んでしまった。大木の根っこに貧しいなりをした老人が座っており、「お前は栄華と不老長寿のどちらを望むか?」と訊ねた。老母のことを思い、男が「不老長寿」と答えると、老人は男にふくべを出させ、革の袋から桃色の水を流し込んだ。男がふくべに栓をして顔を上げると、老人の姿は消えていた。男が山を下り、老母に桃色の水を飲ませると、老母はその後、長く生き、息子は先に死に、病気はいっこうによくならず、病みババアとして延々、苦しみ続けたという。


 これは我ながら、ひどい。ひどいが、不老長寿って、そういうもんじゃなかろうか?


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