バカとアホ

 罵倒する言葉として、関東ではバカがよく使われ、関西ではアホがよく使われる。
 もっとも、関東でアホがまったく使われないわけではない。よく知らないが、関西でも、たぶん、バカを使うことはあるだろう。


 ただ、言葉と言葉の間に、例えば、「そんなこと言ったってさ、バカ、うまくいくわけねえじゃん」というふうに軽く挟む場合、関東ではバカ、関西ではアホがもっぱら使われる(と思う)。


 あくまで、北陸〜関東と集団就職的パターンで今まで来たわたしの語感だが、アホのほうがやわらかい響きに感じられる。


 例えば、関東の女性に
「バカ」
 と言われると、「なに言いやがる、このクソ女」とむかっ腹を立てるか、「む。否定できぬ」と来し方行く末を思い、落ち込んでしまう。
 しかし、
「アホ」
 と関西の女性に言われると、やわらかい響きがして、わたしならこれだけで、少なくとも二合はイケる。


 関東の女性に同じ効果を出していただくには、
「うん、もう、バカ」
 と、「うん、もう」が必要になる。「うん、もう」が入って、どうにか、一合といったところだ。


 関係ないが、女性に言われて、一番困るのは、
「スットコドッコイ!」
 だと思う。どう反応すればいいのか、とまどうはずだ。


 では、「ちょっといい感じのシーン」を作るうえで、「アホ」のほうが「バカ」より優
れているかというと、必ずしもそうではない。


 海に向かって女の子が叫ぶシーンを想像していただきたい。


「バカーッ!」
 と、女の子が叫ぶのはいいものだが(二合イケる)、
「アホーッ!」
 はどうも様にならない。飛んでるカモメもズッコケる。


 あるいは、
「お父さんのバカーッ!」(タッタッタッタ)*1
 はいいが、
「お父さんのアホーッ!」(タッタッタッタ)
 では、「この子は坂田利夫の娘であろうか?」と考えてしまう。


 ついでに言うと、
「お父さんのスットコドッコイ!」
 では、タッタッタッタ、と走り去れない。言葉の不思議である。


 なお、今日、書いたシチュエーション、どれも現実にはほとんどありえない。だから、わたしはシラフなのである。


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*1:走り去る音である