メーテルリンクの青い鳥、という有名な話がある。
確か、幸福の青い鳥を探しにいったチルチルとミチルの兄妹が見つけられず、うちに帰ったらそいつがいた、という話だったと思う。トンマな兄妹である。違うか。
どうもわたしは物事をひっくり返してみたくなるタチで、「不幸の赤い鳥」という話があるとしたら、どんなものになるか考えてみたい。
まず、自分からわざわざ不幸を見つけに出かける、ということは考えにくいから、チルチルとミチルは赤い鳥に追っかけられることになる。
凶相の赤い鳥がクワーッと飛びかかってきて、チルチルとミチルはわーっと逃げ出すのだ。
幸福は追い求めるものだが、不幸は追いかけてくるものである。
と、一見、深そうに見えて、実はそうでもないことをとりあえず書いておいて、さあ、続きだ。
ふたりがどういうふうに逃げて、どんなエピソードが入るかは、作家でないわたしには荷が重い。特に興味もない。
ともあれ、チルチルとミチルが何とか逃げ切って家に帰ってみると、そこに赤い鳥が待ちかまえていた、とまあ、そういうやりきれない話だ。
悪夢によくあるパターンだな。
借金地獄の人が全国を逃げて逃げて逃げ回って、やっと見つけた静かな隠れ家に、ある日、帰ったら、取り立て屋が待ちかまえていてニンマリ笑った、というような、救われない話のパターンをきちんとなぞっている。
「特に幸福と不幸とも関係ない黄色い鳥」というのはどうだろう。
「お兄ちゃん、窓の外を黄色い鳥が飛んでいくね」
「うん。どうでもいいから、放っとこう」
「そうだね」
さっさと勝負がつくので、これはこれで結構だと思う。