におい

 昔の山下洋輔のエッセイに、二日酔いのときの拷問的行為として、「犬の背中の臭いをかぐ」というのが挙がっていた。確か、ギタリストの渡辺香津美の意見だったと思う。


 想像するだけで、気持ち悪くなりそうだ。今、二日酔いでこれを読んでいる方々には、わたしから「勝った!」という言葉を贈りたい。


 動物園に行くと、独特の「獣くささ」とでもいうべきにおいがする。
 わたしはあれが苦手で(得意という人はあまりいないだろうけど)、動物園はどちらかというと敬遠したい。


 しかし、考えてみれば、人類も昔はああいうにおいを発していたのだろう。


 それが、だんだんとにおいを消す、あるいはごまかすことを始め、今ではさわやかサワデーの日々なのであるが、これ、人類史、文化史として結構、面白いテーマなのではないか。


 衣服というものを着始めた、というのは、体温の調節という意味でも大きかったろうが、「着飾る」という行為を始めた点でも、興味深い。
 おそらく、衣服を着て、イカすだの、ダサいだのとやっているのは人間だけだろう。


 なぜ人間が服を着始めたのかを研究している学者は、たぶん、ある程度、いるはずだ(知らんけど)。


 では、人間が動物園のあのにおいから訣別した理由を研究している学者はいるのだろうか。
 どうしてこう、においを消しまくり、ゴマカしまくり、さわやかサワデーの日々となったのか。


 衛生上の理由から、というのはひとつ考えられる。しかし、それだけとも思えない。


 面倒くさいので、わたしは調べるつもりはない。
 誰か、代わりにやってくれい。


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