台風

 アメリカでは台風に人名をつける。台風メアリーとか、台風サラとか。
 もっぱら、女性の名前をつけていたが、「なぜ女性名ばかりなのか!」とアバラ骨方面の人々が言い出したのか、この頃は男性の名前もつけるらしい。


 日本でも、戦後すぐには、キャスリーン台風、キティ台風などが来襲している。別に彼女達はアメリカから来たわけではなくて、来たのは占領軍の人々。おそらくは、その影響だろう。
 沖縄では、返還まで台風に人名をつけていたとも聞く。


 台風11号などという素っ気ない名前より、人名のほうが印象や記憶に残っていいと思うのだが。


 台風太郎、台風香織、なんていうのも悪くはないが、わたしがオススメしたいのは名前より姓。しかも敬称付き、である。


「大型で強い勢力を持つ台風山田さんは現在、八丈島の西80kmの海上を通過中で、明日未明には関東に上陸する恐れがあります」
 なんていう報道が流れたら、かなりインパクトがあると思うのだが。


 これに誤植が混じると、大変なことになる。


「大型で強い精力を持つ台風山田さんは現在、八丈島の西80kmの海上を通過中で、明日未明には関東に上陸する恐れがあります。付近では十分な警戒が必要です」


 確かに十分な警戒が必要であろう。


 山田さんが台風でなくなると、さらに危険の度合いは強まる。


「大型で強い精力を持つ係長山田さんは現在、霞ヶ丘二丁目の交番西80mを通過中。さらに精力を増して若葉町三丁目に接近しております。付近では、戸締まりをしっかりする、危険区域の住民は公民館に自主的に避難するなどの、厳重な警戒が必要です。……アッ、ただ今、民家の二階ベランダからブラジャーが山田さんに引き寄せられました!」


 凄いぞ、山田さん。パワフルだぞ、山田さん。迷惑だけど。


▲一番上の日記へ