一昨日に書いた「ラスト・ワルツ」(id:yinamoto:20050508)の続き。興味ない人にはスンマセン。
「ラスト・ワルツ」のサントラCDを買った。
DVDを持っているからサントラはいらないや、と思っていたのだが、オロカであった。映画に未収録の曲が入っているし、やはり映像で見るのと曲だけを聴くのでは体験が違う。
一昨日の日記では、「キャラバン」の前半でヴァン・モリソンが緊張していると強調したけれども、曲だけを聴くと全然、そんなことはわからない。
むしろ、最初から飛ばしていて、曲の中に入り込んでいるように聞こえる。
それがヴァン・モリソンの歌い手としての腕なのかもしれない。熱唱しているようで、実は自分の心をコントロールしようとしたり、細かな調整を試みたりしている様が、フィルムには収められている。
とにかく、映画のほうでは、ヴァン・モリソンがロビー・ロバートソンのことをやたらと気にしていることが、私には気になってしまうのだ(そんな私を気にしても気にしなくても、それはまあ、どっちでもいいです)。
サントラでは、映画には未収録の、ヴァン・モリソンの「アイルランドの子守歌」が素晴らしい。「キャラバン」と同じく、圧倒的だ。
原曲は知らないが、ヴァン・モリソンとザ・バンドはR&Bのスローブルース調で演奏している。
最初は、ザ・バンドのピアニスト、リチャード・マニュエルが唄い(これがまた素晴らしい)、途中からヴァン・モリソンが出てくる。
これはもう、聴いてみてください、としか言いようがない。私は完全に持ってかれました。
次のページに、歌詞が載っている(リチャード・マニュエルのパートだけだが、Audio Fileもある)。
・Tura-Lura-Lural (That's An Irish Lullaby)
上のほうにある歌詞が原曲、下のほうにあるのが「ラスト・ワルツ」で唄われた歌詞だ。
ヴァン・モリソンは原曲の一題目をカットして唄っている。正解だろう。一題目は説明的すぎて、想像力の働く余地を奪ってしまう。
「ラスト・ワルツ」のほうの歌詞を訳してみる。
なぜこんなことをしたくなったのかは、自分でもよくわからない。惚れたものに対して、何かしないでいられない、という心理かもしれない。
トゥラ、ルラ、ルラ
トゥラ、ルラ、ライ
トゥラ、ルラ、ルラ
静かに! 泣かないの
トゥラ、ルラ、ルラ
トゥラ、ルラ、ライ
トゥラ、ルラ、ルラ
それがアイルランドの子守歌
ああ、よく、夢の中のことだと思うんだけど
田舎の家に戻って
彼女の腕の中にいるのを感じるんだ
ずっと昔、そうしてくれたように
そして彼女の口ずさむ歌声が聞こえるんだ
ずっと昔、クリスマスの頃のように
彼女が僕をやさしく揺すってくれたとき
やさしく揺すってくれたとき
キッチンの扉の外で
だから、今夜、唄っているんだ
トゥラ、ルラ、ルラ
トゥラ、ルラ、ライ
トゥラ、ルラ、ルラ
静かに! 泣かないの
トゥラ、ルラ、ルラ
トゥラ、ルラ、ライ
トゥラ、ルラ、ルラ
だから、今夜、この歌を唄っているんだ
それがアイルランドの子守歌
そう、アイルランドの子守歌だ
橋本治が、昔、人々の心の中にある感情を呼び起こすのが歌の役目だ、みたいなことを何かに書いていた。確かに、この歌はそうだ。
私の訳ではダメだろうけど、歌を聴くと、どんどん心が揺さぶられ、泣けてきます。
「ラスト・ワルツ」のCDは二枚組で、3千数百円する。
音楽を人に勧めるのは難しいものだけれども、私はこの一曲のためだけでも、買う価値があると思う。