私だったら

 以前にテレビのバラエティ番組で、外国人タレントの女の子が“日本人のおかしいところ”として「私だったら」というのを挙げていた。


「外国人タレント」と、大ざっぱな書き方で申し訳ない。中国人タレントでも、インド人タレントでも、イラン人タレントでも、ケニア人タレントでも、ペルー人タレントでもなかった。
 欧米の人だったと思うが、顔すらもう覚えていない。あるいは、ハーフだったか。

 ともあれ、その「私だったら」という指摘だけはよく覚えている。


 その子の言うには、日本人の女の子と話していて、芸能人同士の結婚の話になったとする。そうすると、日本人の女の子は、よく「私だったら、○○なんかと結婚しないんだけどなあ」と言う。
 その子は、こんなツッコミを入れていた。
「でも、あんた、別に××(新婦の名前)じゃないじゃん」


 ごもっとも、と思った。
「私だったら、そのまんま東なんかと結婚しないんだけどなあ」
「でも、あんた、別にかとうかずこじゃないじゃん」
 というような話だろう。その手の話をする人は、女の子に限らず、多い。


「おれだったら、六本木ヒルズになんか住まないけどなあ」
(でも、お前、堀江社長じゃないじゃん)


「私だったら、公務員とは結婚しないけどなあ」
(でも、あなた、サーヤじゃありませんから)


「おれだったら、楽天には行かないんだけどなあ」
(でも、お前はキーナート(元)GMじゃない)


 とまあ、そんな話が今日もあちこちでなされていることだろう。


 かく言う私も、新聞を読んでは、
「おれなら、営利誘拐はしないけどなあ」
「おれなら、斧で一家惨殺はしないけどなあ」
「おれなら、チェーンソーで通り魔殺人はしないけどなあ」
 などと、ブツブツつぶやいている。