音楽の父

 バッハを「音楽の父」と呼ぶ人がいるが、おそらくはそう呼んだ本人も気づかないうちに、傲慢な物の見方をしていると思う。


 バッハは偉大な作曲家だが、別にバッハが生まれる前から音楽はあったし、彼がいなくても素晴らしい音楽は生まれただろう。少なくとも、常磐津や清元はバッハがいなくても、成立したと思う。


 せいぜい、「ヨーロッパ系統のある種の音楽体系の父」というところだろう。
 もちろん、バッハはその後の“クラシック”と呼ばれる音楽に直接・間接の影響を与えた。音楽理論や、音に対するある種の感覚という点では、ジャズやポップスにまで、その影響は続いていると思う。


 しかし、彼が影響を与えていない音楽はたくさん存在するし、それらの中にも素晴らしいものはある。


 彼を「音楽の父」と呼ぶのは、ある種の音楽ジャンル、音楽体系を“正しい”とする傲慢さ(逆にいうと、他の音楽ジャンル、音楽体系を見下す態度)の表れである。



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“日記の父”
ヨシノリ・セバスチャン・イナモト
(大イナモト、1966-2056)


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