まだまだグリーンのビラビラ

 ひつっこく、ビニール製のグリーンのビラビラ問題について、続けるのである。
 アタシもかつてはスッポンのヨシノリと呼ばれた男だ。簡単には引き下がらないよ。すぐに引き揚げるけど。


 なお、昨日のコメント欄にも書いたが、この日記では「バラン」という呼び方はしない。あくまで、「グリーンのビラビラ」で通す。
 モノによっては「ピンクのビラビラ」とか、「ファンシーのビラビラ」と記す場合もあるかもしれないが、ビラビラはビラビラだ。なぜなら、あれはビラビラだから。


 amehareさんがグリーンのビラビラについて書いていらっしゃる。


Amehare MEMO


 冒頭の、波に富士のビラビラを見たときには、一瞬、「ム。敵もやるではないか」と思ったが、きっと実際に見たら、ビラビラはビラビラなのだろう。


 amehareさんの紹介していらっしゃる会社のサイトには、いろんなビラビラが載っている。


新日本ケミカル・オーナメント工業株式会社


 中には、葉の枯れ具合を再現したとおぼしきビラビラまである。こういうのを、確か、「木を見て森を見ず」、「ダイエットして顔を見ず」というのだ、と、昔、学校で習った淡い記憶が蘇る。


 上半分の、簡単な形のビラビラは、同じタイプのものを上下ひっくり返してひっつけると、うまく噛み合う形になっているようだ。カッターで効率よく型抜きできるのだろう。
 コスト意識がかいま見える。これは製造業として、間違った考え方ではない。ビラビラではあるけれど。


 ページの冒頭には、「※ どこよりも安くします 当社にお任せ下さい」とある。品質ではない。まず安さが売りなのだ。
 しかし、これもビラビラのメーカーとしては間違っていない。なぜなら、あくまでビラビラだからだ。


 社名を全て日本語に訳すと、「新日本化学装飾品工業株式会社」である。ビラビラのメーカーにふさわしい。
 本社の所在地は、大阪の岸和田だそうだ。このメーカーがビラビラを発明したのかどうかはわからないが、昨日書いたビラビラ発明家の大阪弁と、奇妙に符合する。が、まあ、たぶん、偶然だろう。


 さて、ビラビラ・メーカーから離れよう。amehareさんはもっと重要な指摘をなさっている。「寿司屋のかみさん おいしい話」(佐川芳枝)という本からの抜粋で、おそらくは20年近く前の話。


出前の寿司を届けると、あとで、「笹の葉なんか入ってると、不潔な感じがするから、入れないでください」という電話がきた。(中略)5、6月の新緑のシーズンに出回る笹の葉は、緑が鮮やかでみずみずしく、季節を感じさせてくれるものだが、人によってはビニール製のバランの方が清潔に感じるのだろう。そう思っているのは、このお宅だけではないかもしれないと、夫と話しあって、出前に使うのはビニール製のバランに統一してしまった。


 笹の葉を不潔と感じるやつが寿司なんぞ食うな。特に江戸前の寿司は、粋で鯔背な食いもんだ。


 寿司屋は、もちろん、清潔を心がけて寿司を握っているはずだが、それでも握る手からは微量の汗が出る。手のひらが完全な無菌であるわけもない。寿司屋の人々はそうやって何百年と寿司を握り、客はそれを楽しんできた。
 それが嫌なら、完全無菌状態の工場でネタ、米を殺菌消毒し、全自動の機械で握って、真空パックした寿司を食うしかない(どうせだから、グリーンのビラビラを30枚入れておいてやれ)。


 それに、寿司の上に乗っかっているネタだって、ほんの少し前にはプランクトンや細菌だらけの海の中を泳いでいたのだ。
 寿司とは、そういう食いもんなのである。


 もちろん、時と場合と程度にもよるけれど、世の中の無菌信仰には行き過ぎのところがあると思うのだ。


 ただし、この、笹の葉に文句をつけてきた人は、実は新日本ケミカル・オーナメント工業株式会社の社員あるいはその家族だった可能性もある。ひそかにグリーンのビラビラのさらなる普及を狙っていた、という陰謀説も考えられないではない。


 なお、私は、「グリーンのビラビラ追放委員会」委員長としての独断で、コンビニ弁当中のグリーンのビラビラに限り、黙認することに決めた。なぜなら、コンビニ弁当は大量生産による安価な工業製品であり、グリーンのビラビラこそが、そのシンボルとしてふさわしいからだ。
 ついでに書いておくと、現在の私の肉体の1/3はコンビニ弁当によって形成されている。


 ビニール。新日本ケミカル・オーナメント工業株式会社。コスト意識。「※ どこよりも安くします 当社にお任せ下さい」。不潔な感じ。無菌信仰。コンビニ弁当――。


 グリーンのビラビラには、日本の現代社会を輪切りにしたときに溢れ出てくるものの全てが詰まっている、と書いたら非常に過言である。


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