物事をあてずっぽうに考えるクチのせいか、昔から数学が苦手だ。
苦手意識が先に立って、今では数式を見ただけで脳味噌が止まってしまう。「稲本殺すにゃ刃物はいらぬ、πのひとつもあればいい」、てなものである。
特に苦手なのが、Σと∫というやつで、これの後に記号がズラズラと並ぶと、つい反射的に謝ってしまう。
高校で意味を習ったような、霞のごとく曖昧模糊とした記憶もあるのだが、今の私にとっては「とにかく偉い人」、「独裁者」、「ワンマン社長」、「体育教師」である。
なぜなら、たとえば、こんな数式を見ていただきたい。
Σk=1n(c1ak+c2bk) = c1Σk=1nak+ c2Σk=1nbk
∫tan(x)dx = -loge | cos(x) | +C = loge | sec(x) | +C
書いたからといって、私がこれらの数式を理解していると考えないでいただきたい。どこかのウェブサイトからテキトーに引っ張ってきただけである。
また、親切心から稲本に意味を教えてやろうというお気遣いも無用に願いたい。それは、ミツユビナマケモノに労働価値説について説くより無駄な仕事である。
数式に戻るけれども、このΣと∫、なんかエバって見えないだろうか。「全体はおれの支配下にあるのだ」と、得意げですらある。放っておくと、入社式で人生訓を説いたり、銅像を建てたりしかねない。
2つめの数式を引っ張ってくるときに思い出したのだが、 logというやつも、全体を引率するタイプである。しかし、こちらのほうは小文字である分、謙虚な感じがする。
まあ、表向き、謙虚で話がわかるように見えて、裏で社員の厚生年金保険料をネコババしている可能性もあるが。
積年の恨み。数学の話となると、どうも悪意が先に立ってしまう。
数学用語というのも不思議で、たとえば、幾何学というのがよくわからない。なぜにそのような漢字表記になったのか。初めて目にしたときは「いくなにがく」と読んで、馬鹿にされたものだ。
もっとも、ネズミなどの囓歯目を「げっぱめ」と読んだツワモノもいるから、上には上が、というか、下には下がいるものである。
平方根というのもよくわからない。なぜにここで根っこが出てくるのか。それとも、平安末期にそんな名前の武士でもいたのか。平二郎三郎方根(たいらのじろうさぶろうかたね)、とか。
因数分解の因数は、何かの原因なのだろうか。原因を分解しちゃって大丈夫なのか、心配である。
しかし、因数というのは、字が似ているせいで困っている数のようにも見え、ちょっとだけ、愛嬌がある。
何を書いているんだか、よくわからなくなってきた。これだから、数学は困る。
と、ここまで書いてきて、Googleで「数学用語」と検索したら、冒頭にこんなページが出た。埼玉大学の酒井文雄という先生のページだ。
・数学用語
これによると、幾何は中国でジオと発音する。geometryを中国で音訳したものなのだそうだ。
ふーん。
知識をいただいておいて何だけれども、あんまりカンタンにわかってしまうというのも、ちょっとつまらないですね。