殺到

 ホテルの前に現れたペ・ヨンジュンにオバハン達が殺到して10人も怪我した、という、痛いようなオモロいようなくだらないようなニュースを読んで、ふと思った。


 男はなぜ美人女優が現れたら殺到しないのだろうか。


 まあ、こういう男性と女性とか、ナニナニ人とナニナニ人という大まかなグループの比較は、乱暴な話になりがちなので気をつけなければならない。


 女性の中にも、「私は殺到しないわよ」という方もいるだろうし(そっちのほうが多いだろう)、男性の中に「殺到する、する! 檀ふみが現れたら、猛烈に突進する!!」という人がいたとしても、それは個人の人間性の問題なのでとやかく言えない。
 せいぜい、檀ふみさんに気をつけてください、とアドバイスする程度だ。


 と、一応の逡巡もワザトらしく示しつつ、やっぱり乱暴な話をするのだ。


 女性の殺到率は、男性より高いように思う。少なくとも、現代の日本では。
 バーゲンセールとなると、オバハン達が開場と同時に突進し、服を奪い合いする、という光景がちょっと前にはよくあった。今もあるのかもしれないが、よく知らない。


 もっとも、こういう話は時代と社会にもよって、二千数百年前の中国で韓信という将軍に「後ろは川だ。前の敵に突撃しないと死ぬぞ」とえらく乱暴なやり方で脅かされれば、そりゃあ、男だって殺到する。
 あるいは、食糧難のときに少ない食料を前にすれば、やはり男も殺到するだろう。


 なので、男と女のどっちが殺到するか、というよりも、何に(誰に)どういう理由で殺到するかを考えたほうが実質的かもしれない。
 何が実質なのか、自分で書いていて、さっぱりわからないけれども。


 女性のほうがこう、スターに対する憧れを長く抱き続ける傾向があるように思う。


 2年前に90歳で亡くなった私の祖母は松平健の大変なファンで、「暴れん坊将軍」を見ることを異常に楽しみにしていた。テレビで放送している間は、電話が鳴っても絶対にとらなかったくらいである。
 もし、あと2年長く生きて、マツケンサンバを見たら、コーフンのあまり、卒倒したかもしれない。それが祖母にとって幸福なことなのかどうかはよくわからないけれども。


 あるいは、私の知り合いにS女史という女性がいる。仕事の話で男性を相手にしてもまったく気後れするところがなく、気性もさっぱりしていて、どちらかというと男性的な性格である。
 ところが、この人が宝塚の、とある男役スターの話になると、身も世もなく溶けてしまうのであった。羞じらい、赤面し、身をくねらせ、最後にはゲル状になってしまう。
 その男役スターが宝塚を退団したときには、徹夜で泣き明かしたそうだ。


 一方の男のほうは、年をとるに従って、スターに対する興味がだんだん薄れていくようだ。というか、擦り切れていくと言ったほうがいいかもしれない。


 殺到する、という現象自体は、たぶん、集団で獲物(ペ・ヨンジュン、バーゲンの服、敵、飯、電車の空いている座席など)を前にするとコーフン状態が高まり、わーっと走り出してしまう、ということなのだろう。


 で、女性には年をとっても王子様的存在に憧れる気持ちが続き、今回のような、どう扱っていいんだか困るような事態に至った、と、そういうことなんじゃないか。


 まあ、あくまで傾向の話であって、女性が全てそうというわけじゃないことは繰り返しておきます。


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