五千円札

 先日、樋口一葉のお札を千円札と間違えたせいでもなかろうけど、買い物をしたら、新しい五千円札が混じってきた。


 今、しげしげと眺めているのだが、この樋口一葉の絵は怖い。
 偽造防止の網目模様のせいだろうか、表情にまるで生気というものが感じられない。魂を抜かれた人のようである。


 一方で、透かしで入っている一葉の絵は生きている。なかなかの美人だ。


 はっきり見えるほうの絵がホラー的になったので、透かしのほうでカバーしたのだろうか。
 新札をデザインした人の、一葉に対する礼なのかもしれない。


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