強烈な印象を残す人物

 今日、どこかのテレビ局がまた美空ひばりの番組をやるらしく、新聞のテレビ欄に広告が載っていた。
 特に興味はないので、どこの局で何時からかは見ていない。


 ある世代の人々に強烈な印象を残している人物というのがいて、たとえば、美空ひばり石原裕次郎、野球なら長嶋茂雄がそうだろう。


 一方で、その世代より下の人間は、もちろん、知っているし、多少の感想はあるだろうけれど、たいてい、さほどの思い入れを持っていない。


 念のために、マンションの前を通った3歳くらいの女の子に、「美空ひばりについてどう思いますか?」とアンケート調査(無作為抽出、サンプル数1名)を行ったところ、親がガキの手を引き、足早に去ってしまった。
 こうやって、世代間の相互理解は、構造的に断絶するのだ。


 強烈な印象の残っている世代は、美空ひばり石原裕次郎については50歳以上、長嶋茂雄は40歳以上(40代後半以上?)だろうか。


 長嶋については、現役引退後の「オモロい長嶋」に強烈な印象を持っていたり、ファンだったりという人もいるだろうが、ここでは、それは除く。


 ああいうオモシロ・オーラを発する存在になったのは、現役引退後だと聞いたことがある。現役時代の長嶋は、本当にヒーローで、オモシロ抜きのスーパースター・オーラがあったらしい(ま、ホームラン打ってベース踏み忘れた、とか、その手のオモシロ話はあったようだが)。
 現役引退後の長嶋は、続編ではあるが、作風を変えた別の作品と考えた方がいいようだ。


 どうも、長嶋について、「聞いたことがある」、「らしい」と曖昧な書き方を続けている。


 子供の頃、私の父親が大の巨人嫌いだったせいで、テレビで現役時代の長嶋を一度も見たことがないのである。
 それどころか、家では、終戦直後の教科書のように、巨人に関する文章はすべて墨で塗りつぶされていた。


 嘘だが。


 美空ひばり石原裕次郎についても、落差は大きい。


 私は30代後半で、ふたりともテレビで見たことがある。しかし、特別な印象は持っていない。


 美空ひばりは歌番組でたまに見かける、大物らしい人、に過ぎなかった。石原裕次郎は、「太陽にほえろ!」のボスで、すでにデブだった。

 石原裕次郎の若い頃の映画も何本か見たことがあるが、「こいつのどこがよかったんだ?」と思う。
 彼らに魅力がないというより、何か、その時代に巻き込まれていないとわからないものがあるように思うのだ。


 友達の加藤は、以前、名画座へ「坂本九」特集を見に行ったことがある。館内は地球中年期の終わりや初老の夫婦でいっぱいだったという。


 九ちゃんが唱うと、それに合わせてオバサン達が歌を口ずさんだりして、なかなかいいものだったそうだ。


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