自己愛

 私は、かなり自己愛が強い方だと思う。


 そんなことを書くと、ナルシストか、と思われるかもしれないが、そうでもない。


 ナルシストというのは、自分を優れていると思い、うっとりとする人のことだ。


 こちらは、何しろ、ロクなところがない。顔なんざ、鏡で見ると、プッと吹いてしまう具合である。
 おかげで、髭を剃るのも、一苦労だ。ゲラゲラ笑いながら、顔が血まみれになったりする。


 私の自己愛は、あえて言うなら、「もう、わたしがいないと、この人はダメね」という世話女房的なものである。
 どうしようもないやつとわかっちゃいるが、愛しちゃったら、しょうがない。どうしてくれるの、憎い人。もう、ツネツネしちゃうン!


 いや、正気である。勢いで書いただけだ。申し訳ない。


 まあ、しかし、「わたしがいないと、この人は」と思う私自体が、やっぱりダメ人間第一号なので、世話を焼こうとしても焼けないのである。


 ダメ男を愛するダメな世話女房。それを愛するダメ男。を愛するダメ世話女房。を愛するダメ男。を愛する……ぐるぐるぐるぐる、ダメの万華鏡。


 これは困った。困りながら、今、血まみれになっている。