不気味な話

 私が住んでいるのは横浜市の北の外れで、もう200mほど行くと、川崎市になる。


 丘の多い土地なので、木の緑も多い。風景に起伏があるのはいいことだ。ところどころには畑もあり、のんびりしていて気に入っている。


 最近、ふと気づいたのだが、カラスの声をほとんど聞かなくなった。


 一時期はうるさいくらいだった。ベランダに出れば、必ず数羽は目にしたし、花見の時期には桜並木に何十羽というカラスが止まっていて、興ざめに感じたものだ。


 きゃつら、どこへ行ったのだろうか。まさか、ばんばん殺されて……と思って、インターネットで調べてみると、横浜市川崎市がどうしているのかは知らないが、全国のあちこちで自治体が駆除をしているらしい。


 散弾銃で撃つ、という直接的な方法をとるところも結構、あるようだ。


 駆除されたカラスはどうなるのだろう。まとめて埋められるのか。想像すると、気持ち悪い。
 カラスが減ると同時に、近所のスーパーにやたらと「鳥の唐揚げ」が並ぶと、さらに不気味だ。


 いるときはうるさいし、目障りだが、いなくなると同情してしまう。我ながら、勝手なものである。


 だいたい、カラスというのは人を不快にさせるようにできている。


 ゴミを荒らす。繁殖期には攻撃的になることもある。
 が、これは向こうも生きるため、子孫を残すためにやっていることだから、責めるのは間違いである。単に、現在の人の暮らし方と合わないだけのことだ。


 人と直接利害のぶつからないところでも、カラスは不利な動物だ。
 色が黒というところに、まず愛嬌がない。おまけにあのガーガー声。愛されにくいようにできている。
 あれが赤青黄色と美しく、「トレビア〜ン、トレビア〜ン」とエレガントにフランス語で鳴く鳥だったらどうだろうか。


 なおさら、撃ち殺したくなるかな。
 撃たれたカラスは、「セ・ラ・ヴィ〜」と鳴いて、死んだりして。


 友人に聞いた話だが、伊豆に行くと、ほとんど野良猫を見かけないそうだ。


 伊豆といえば、干物が名産である。野良猫にとって天国のはずだが、なぜいないのか。
 干物屋の自警団が夜な夜な野良猫を……などと想像すると、これまた不気味である。


 さらに、伊豆の肉屋に、ただ「肉」と書かれた肉が並んでいると、もっと不気味だ。


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