自意識過剰な人々

YouTubeを見ていると、「日本のここが凄い」とか、「世界が驚いた日本の◯◯」とか、「◯◯人に日本の◯◯を見せてみた(食べさせてみた)」とか、その手のタイトルをよく見かける。馬鹿馬鹿しいので動画自体は見ないが、おれはニッポン・バンザイ論と呼んでいる。…

ラテンアメリカ小説遍歴(2023年)その1

正月にガルシア=マルケスの「エレンディラ」を読み直したら、相変わらず面白く、その流れでラテンアメリカの小説をあれやこれやと買い込んでしまった。今は順番に読んでいる。 昨年も、年末年始にガルシア=マルケスを読んで、ラテンアメリカ小説ブームがお…

イメージが違う名前

名は体を表すというが、どうも実際のイメージと名前のイメージが食い違うものもあるんじゃないかと思う。 たとえば、 パピヨン スティーブ・マックイーンとダスティン・ホフマン主演で、絶海の孤島の刑務所から脱獄するという、カッコよくハードな映画のタイ…

ナイポールの「ミゲル・ストリート」は面白うてやがて哀しき

V.S.ナイポールの「ミゲル・ストリート」を読んだ。 ミゲル・ストリート (岩波文庫) 作者:ナイポール,V.S. 岩波書店 Amazon ノーベル賞作家、V.S.ナイポールの処女作だそうだ(二作目の「神秘な指圧師」が先に出版されている)。 ミゲル・ストリートはカリブ…

遠藤周作「深い河」は深いのかおれが浅いのか

遠藤周作の晩年の作「深い河」を読んだ。 深い河 新装版 (講談社文庫) 作者:遠藤周作 講談社 Amazon 遠藤周作は日本では少数派のキリスト教徒として育った。若い頃、ヨーロッパ(確かフランス)に留学し、文化の壁にぶちあたった。そのとき、おそらく、ヨー…

クリスマスへの違和感

この時期になると毎年書いているのだが、おれは「街のクリスマス気分」というやつに違和感があってしょうがない。 街路樹にLEDが仕掛けられ、夜になると点灯される(あれ、街路樹にしたら休めなくてしんどいんじゃなかろうか)。クリスマスソングがそこらじ…

油断している人々

街を歩いていると油断している人に随分と出くわす。 一番わかりやすいのが歩きながらスマホを見ている人で、何をそんなに夢中になっているのであろうか? と不思議に思うのだが、かなりいる。ああいうのは自分は人やクルマにぶつからないと信じているという…

ワールドカップとオリンピック

サッカーのワールドカップを楽しんでいる。世界中のいろいろなチーム、選手を見られるのはやっぱり楽しい。 おれはプレミアリーグのリヴァプールが好きなのだが、各国代表の試合にはクラブサッカーとはまた違った魅力があるように思う。 各国代表の試合はク…

カズオ・イシグロ「日の名残り」 信頼できない語り手

英国の作家カズオ・イシグロの「日の名残り」を再読した。 日の名残り (ハヤカワepi文庫) 作者:カズオ・イシグロ,土屋 政雄 早川書房 Amazon 以前に読んだのはだいぶん昔である。以下、ネタバレありである。 かつて英国の貴族ダーリントン卿に仕えた執事が第…

ラベル「ピアノ協奏曲ト長調」を聞き比べる

ラベルの「ピアノ協奏曲ト長調」が好きで、いくつか持っている。 特に第二楽章は映画音楽のようでわかりやすく、美しく、そこだけを取り出して聞いたりもする。 今日は聴き比べの感想を書いてみたい。第二楽章だけでも結構長いから、前半部分を取り出してみ…

談志と志ん朝

部屋を掃除したり、アイロンをかけたりするときはヘッドホンで落語を聞きながらのことが多い。 落語の中では立川談志を一番よく聞く。ソフトが多く、演目もバラエティに富んでいて、いろいろとその時の気分、気分に合わせて選ぶことができる。 時々は古今亭…

クラシックへの目覚め

おれはガキの時分、もっぱらクラシックしかかからない家に育って、かえってクラシックに抵抗感を覚えるようになってしまった。 特にひとつ年上の兄がクラシックに傾倒していたので、反抗心もあって、ジャズやロックをもっぱら聞くようになった。あるとき、兄…

テレビをつまらなくしたのは誰か

おれはテレビを全く見なくて、おそらく正月に実家に帰ったとき以来、かれこれ10ヶ月くらいは見ていないと思う。 YouTubeなんかで昔の番組を見ることはある。今の時代なら許されないだろうなー、というような過激な表現が時々あって、ドキッとすることがある…

フォークナーを読む

ここしばらくアメリカの作家、ウィリアム・フォークナーの小説を読んでいた。 好きな作家、ガルシア=マルケスが「師匠」とまで読んでいる人なので、どんなものだべさ、と読んでみたのだ。 まずは「八月の光」から。ガルシア=マルケスの自伝「生きて語り伝…

お役所仕事について

別の区に引っ越すことになったので、住民票の届出ってどうなるのかしらん、と調べてみたら、マイナンバーカードが必要だという。 今まで特に必要なかったのでつくっていなかった。あらためて調べてみると申請してから1ヶ月もかかるという。何にそんな手間が…

選挙カー

隣の区で区議会選挙があるせいで、選挙カーが近くを走り回っている。 ただただ名前をわめき散らすばかりで、実にうるさい。 名前を連呼するのは、公職選挙法で、選挙カーでは連呼のみが許されるとされているからだそうだ。不思議な規定である。 候補者の側か…

漫画とアニメは違う

おれは日本のアニメが嫌いで、ほとんど見ることがない。二十代の頃はそれでも宮崎駿のアニメを見たりしていたが、あるとき、大仰でわざとらしい演出に嫌気がさして、それ以来見ていない。宮崎駿に限らず、日本のアニメは演出が大仰であざとく、全体に子供っ…

台風の影響力

今日の東京は台風が近づいている影響で、大雨が降ったりやんだりしている。 降るときには激しく、いわゆる「滝のような雨」なのだが、ふっとやんだりする。相当に大気が不安定なのだろう。 毎年、台風が来るたびに、その威力に感心する。よくまあ、こんなに…

ユンケルレーシング

レッドブルがのしてきたのはいつ頃だろうか。今ではどこのコンビニにも置いてある。気軽に飲める栄養ドリンクというイメージだ。 元々は日本の栄養ドリンクからヒントを得てつくられたという話もある。日本のサラリーマンがアリナミンAやリポビタンDをクイッ…

蜘蛛

部屋の中に小さい、5mmほどの蜘蛛がいる。巣を張るタイプではなくて、壁や床を素早く這うタイプだ。 蜘蛛の嫌いな人は蛇が平気で、蛇の嫌いな人は蜘蛛が平気という話がある。本当かどうかわからないが、おれは蜘蛛は平気だが、蛇は大の苦手である。 部屋の中…

セミの一生

自転車で羽田あたりまで行った。 緑の多いところではセミが盛大に鳴いていた。夏ももう終わりだから、最後のひと騒ぎというところだろう。 セミは幼虫時代、土の中で樹液を吸って暮らす。7年土の中で過ごすという話もあるが、それは外国のセミで、日本のアブ…

昔の日本の人口

今、「気候で読む日本史」(田家 康著、日経ビジネス人文庫)という本を読んでいる。気候の変化がいかに日本あるいは世界の歴史に影響を与えてきたかという興味深い内容だ。 気候で読む日本史 作者:田家 康 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 Amazon こ…

右翼の謎

会社の近くにロシア大使館があり、この時期になると、右翼の街宣車がよく押しかけてくる。 大使館近くの交差点には警察が移動式の柵を設けていて、街宣車が来ると交差点を閉鎖する。警察と右翼の間で多少の交渉というか、押し問答をした後、街宣車は去ってい…

死後の年齢問題

クリント・イーストウッド監督の「ヒアアフター」を見た。 youtu.be 見るのは、たぶん3度目だと思う。イーストウッド監督の作品にほとんどハズレはないのだが、これもいい。 イーストウッド監督の作品には運命を独力で切り開く主人公が描かれることが多い。…

英文日本語文の構造と翻訳の難しさ

今、アメリカの作家ウィリアム・フォークナーの小説を読んでいる。 最初に読んだ「八月の光」は割りに読みやすかったのだが、今読んでいる「アブサロム、アブサロム!」は読みにくい文が多く、苦戦気味である。 何が読みにくいって、一文が長く、読んでいる…

痒みの描写

おれはアトピー体質で、特に夏と冬にひどくなる。 夏は汗をかくので、どうやらその汗の中の物質が皮膚に悪い反応を起こさせるらしい。己の体内からの物質で己の皮膚がやられるとはどういうことか、と思う。冬は乾燥するので、皮膚に隙間ができ(いわゆるドラ…

動物のセクシーボイス

昨日、自転車に乗っていたら急な雨にやられた。 結構な土砂降りだったのだが、しばらくすると晴れた。途端に、アブラゼミがそこらじゅうでジィジィ鳴き始めた。いかにも夏という感じがする。 アブラゼミで鳴くのはオスだけで、あの声でメスに己の存在をアピ…

興奮した議論

安倍元首相が銃撃されて亡くなった。衝撃的ニュースである。 こういうことが起きると、興奮してあれやこれやと議論する人が大勢出てくる。そうしたい気持ちも、まあ、わかる。興奮すると何かしないでいられなくなるのだろう。 では、そうした論説なり議論な…

赤ちゃんの見る夢

赤ん坊が抱っこ紐で母親の体にぴたっとくっついて眠っている姿を見るのはいいものだ。 先日も、そんな親子とすれちがって、ふと「赤ちゃんも夢を見るのだろうか?」と思った。 赤ちゃんは一日の半分以上を寝て過ごすが、その間が無の世界なのか、夢を見てい…

イタい単純化

人間はつい単純化してしまいがちな生き物であって、おそらくは複雑なものを複雑なまま捉えるということがとても難しいからだろう。 学問方面の「理論」というのもおそらくは単純化のためである(というのまとめ方も単純化だ)。理論によって単純化することに…